優待めぐり
手持ち

優待クロス(つなぎ売り)の仕組みを図解

最終更新日: 2026-09-27

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3行でいうと

  • 同じ株を「買い」と「売り」で同じ数だけ持つと、株価が動いても損得がほぼ0円になります。
  • 「買い」の側で株主の権利が付くので、権利確定日をまたぐと株主優待を受け取れます。
  • ただし手数料・貸株料などのコストがかかり、優待の価値を上回ることもあります。

仕組み:値動きの損得を打ち消す

株主優待をもらうには、権利確定日に株主である必要があります。ただ、株を買って持っている間に株価が下がると損をします。 そこで、株を買うのと同時に、同じ株を同じ数だけ借りて売っておくのが優待クロスです。

図1「買い」と「売り」を同じ数だけ持つと、値動きの損得が打ち消し合う

① 現物買い(ふつうに株を買う)

株主になれるので、優待の権利が付きます。株価が上がると得、下がると損。

② 信用売り(株を借りて先に売る)

借りた株なので株主にはなりません。株価が下がると得、上がると損。

例:株価1,000円の株を、①と②で100株ずつ持ったあと、株価が100円動いたら――

株価が上がった1,000円 → 1,100円

① 現物買い
+10,000円
② 信用売り
−10,000円
合計
0円

株価が下がった1,000円 → 900円

① 現物買い
−10,000円
② 信用売り
+10,000円
合計
0円

株価が上がっても下がっても、値動きの損得はほぼ0円。①で株主の権利が付くので、株主優待だけが手元に残る――これが優待クロスの考え方です。

例の数字は説明用です。実際には売買手数料・貸株料などのコストがかかります(図4)。

流れ:注文から優待が届くまで

ポイントは「権利付最終日に両方を持っていること」と「翌日以降に現渡しで終わらせること」の2つです。 日付は権利カレンダーで月ごとに確かめられます。

図2優待クロスの流れ(9月末が基準日の場合・2026年の例)
  1. 〜9月28日(月)注文する

    同じ銘柄を現物買いと一般信用売りで、同じ株数だけ注文します (取引時間の前に成行で出す方法が一般的です)。
  2. 9月28日(月)権利付最終日

    この日の取引が終わった時点で両方を持っていれば、株主の権利が付きます。
  3. 9月29日(火)以降現渡しで決済

    持っている現物株を、借りた株の返済にそのまま充てます(現渡し・品渡し)。これで取引は終わりです。現渡しの受け渡しも2営業日後なので、確定日の株主名簿には載ったままです。
  4. 9月30日(水)権利確定日(基準日)

    株の受け渡しは注文の2営業日後なので、28日に買った株でこの日の株主名簿に載ります。
  5. 数か月後優待が届く

    届く時期は会社ごとに違います(多くは2〜3か月後)。

日付は土日・祝日を除いた営業日で数えた目安です。年や月によって変わるため、実際の日付は権利カレンダーや各社の案内で確かめてください。

なぜ「一般信用」の売りを使うのか

信用売りには「制度信用」と「一般信用」があります。制度信用では、後から金額が決まる逆日歩という追加の料金がかかることがあるため、優待クロスでは逆日歩のかからない一般信用の売りを使うのが一般的です。

図3信用売りには2種類ある――優待クロスで「一般信用」が使われる理由
逆日歩(品貸料)
制度信用:かかることがある。金額は後になって決まる
一般信用:かからない
返済の期限
制度信用:6か月
一般信用:証券会社ごとに決める(短期・無期限など)
貸株料
制度信用:かかる(年率・日割り)
一般信用:かかる(年率・日割り。料率は証券会社ごと)
売れる株の在庫
制度信用:証券金融会社から借りる仕組み(対象は貸借銘柄)
一般信用:証券会社ごとに用意。売り切れることがある

逆日歩は、売りたい人が多すぎて株が足りないときに発生する追加の料金です。権利確定日の前後は発生しやすく、優待の価値を上回ることもあります。

かかるコスト

値動きの損得は打ち消せても、取引そのものにかかるお金は残ります。実行する前に、コストの合計と優待の価値を比べることが大切です。

図4かかるコストは3つ――合計が優待の価値を上回ることもある
  1. ① 売買手数料

    買いと売りの注文にかかる手数料。無料の会社・コースもあります。

  2. ② 貸株料

    株を借りている日数ぶん払う料金。早く売りを入れるほど日数が増えます。

  3. ③ 配当まわりの差

    配当がある銘柄では、受け取る配当と払う配当相当額の差(税金の分)が負担になります。

② 貸株料の計算例

株価1,000円 × 100株 = 10万円 を、年率1.5%で10日間借りると
10万円 × 1.5% × 10日 ÷ 365日 = 約41円

同じ条件で30日間なら約123円。日数に比例して増えます。

③ 配当まわりの差の例(配当が1株10円・100株の場合)

① 現物買いで受け取る配当(税金20.315%が引かれる)
+797円
② 信用売りで払う配当相当額(配当落調整金)
−1,000円
差し引き
−203円

計算例の株価・料率・日数・配当は説明用の数字です。料率は証券会社・銘柄ごとに違います。

株価・株数・料率・日数を入れると、クロスコスト計算機で概算できます。

証券会社ごとの一般信用売りの取り扱い

一般信用売りの在庫は証券会社ごとに別々で、人気の優待銘柄は早く売り切れることがあります。 このため、複数の証券会社に口座を持って在庫を探す人が多くいます。理由は口座の使い分けガイドで図解しています。

2026-07-11時点の公開情報。取り扱い・在庫の状況は変わるため、最新は各社の公式サイトで確かめてください。

リスクと注意点(必読)

  • 発注方法: 同じ銘柄の買い注文と売り注文を意図的にぶつける行為は、相場操縦(仮装売買など)と誤解されるおそれが指摘されています。取引時間の前(寄付前)に成行で出す方法が一般的とされますが、必ず利用する証券会社の案内・注意事項に従ってください。
  • コストが上回る: 貸株料の日数が増えたり、配当まわりの差が大きかったりすると、コストが優待の価値を上回ることがあります。実行前に試算してください。
  • 在庫・約定: 一般信用の在庫が取れない、片方だけ約定してしまう(その間は値動きの損得が出る)ことがあります。
  • NISA口座ではできない: NISA口座では信用取引ができないため、クロスは課税口座で行います(新NISAと株主優待)。
  • 長期保有の条件: 半年・1年以上などの継続保有を優待の条件にする会社が増えています。1回だけのクロスでは優待の対象外になる銘柄があるため、各銘柄の出典(公式発表)を確かめてください(QUOカード優待の一覧では継続保有の条件の有無で分けています)。

ことばの意味

現物買い
ふつうに株を買って持つこと。株主になり、優待や配当の権利が付きます。
信用売り(空売り)
証券会社から株を借りて先に売り、あとで返すこと。株主にはなりません。
一般信用・制度信用
信用取引の2つの種類。優待クロスでは逆日歩がかからない一般信用が使われます(図3)。
権利付最終日
この日に株を持っていれば株主の権利が付く、最後の取引日。権利確定日の2営業日前です。
権利落ち日
権利付最終日の翌営業日。この日以降に買っても、その回の権利は付きません。
権利確定日(基準日)
株主名簿に載る日。この日の名簿をもとに優待が送られます。
現渡し(品渡し)
持っている現物株を、信用売りで借りた株の返済にそのまま充てること。
貸株料
信用売りで株を借りている間に払う料金。年率を日割りで計算します。
逆日歩(品貸料)
制度信用で、株が足りないときに売り手が払う追加の料金。後になって金額が決まります。
配当落調整金
信用売りをしたまま権利確定日を越えると払う、配当に相当するお金。

※本ページは手法の仕組みの説明であり、取引をすすめるものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします(免責事項)。

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